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ADHDの診断基準について
ADHDの診断基準は、2013年にアメリカ精神医学会が発表したDSM-Vを基準にしています。少し長いですが、内容は下記の通りです。(読みやすいように一部改変)
診断基準の概要
A. 下記の(1)または(2)によって特徴づけられる、不注意または多動性ー衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げとなっているもの。
(1) 不注意
以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。
※ それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。
項目 | 内容 |
(a) | 学業、仕事、他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする (例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である) |
(b) | 課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である (例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい) |
(c) | 直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える (例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える) |
(d) | しばしば指示に従えず、学業、用事、または職場での義務をやり遂げることができない (例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する) |
(e) | 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である (例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりがない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない) |
(f) | 精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う (例:学業や宿題、青年期後期および成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと) |
(g) | 課題や活動に必要なものをしばしばなくしてしまう (例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話) |
(h) | しばしば外的な刺激(青年期後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう |
(i) | しばしば日々の活動で忘れっぽい (例:用事を足すこと、お使いをすること、青年期後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること) |
(2) 多動性および衝動性
以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。
※ それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。
項目 | 内容 |
(a) | しばしば手足をそわそわと動かしたりトントン叩いたりする。またはいすの上でもじもじする。 |
(b) | 席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる。 (例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる) |
(c) | 不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする。 ※ 青年または成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない。 |
(d) | 静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない。 |
(e) | しばしば「じっとしていない」、またはまるで「エンジンで動かされるように」行動する。 (例:レストランや会議に長時間とどまることができないかまたは不快に感じる他の人達には、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない) |
(f) | しばしばしゃべりすぎる。 |
(g) | しばしば質問を終わる前にだし抜けに答え始めてしまう。 (例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう。会話で自分の番を待つことができない) |
(h) | しばしば自分の順番を待つことが困難である。 (例:列に並んでいるとき) |
(i) | しばしば他人を妨害し、邪魔する。 (例:会話、ゲーム、活動に干渉する。相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない。青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない) |
B. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。
C. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況において存在する。
(例:家庭、学校、職場;友人や親戚といるとき;その他の活動中)
D. これらの症状が、社会的、学業的または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。
E. その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない。
(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害、物質中毒または離脱)
以上、少し長い診察基準ではありますが、これを基にして医師はADHDを診断しています。
ADHDの3つのタイプについて
ADHDは大きく分けて「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの特性がみられます。
ただし、この3つの特性が全て現れるわけではなく、どの特性が目立つかによって後述する3つのタイプに分けられます。
不注意優位型
・気が散りやすく、集中力が続かない。
・課題に取り組んだものの、最後まで続かずに放り出してしまうことがある。
・忘れ物が多い。
・整理整頓ができない。
多動性・衝動性優位型
・落ち着きがなく、授業中などにじっとしていられない。席を立ってしまうこともある。
・人の話を遮ってしまう。
・思いついたら即行動してしまう。
混合型
・不注意と多動性・衝動性の両方が同じ程度にみられる。
一番多くみられるタイプとその後
最も多くみられるタイプは混合型で、ADHD全体の約70%といわれています。
多動性や衝動性は思春期には比較的に落ち着いてきます。学校という集団生活の中で多動や衝動的な行動が好ましくないものであることを自覚し、コントロールする方法を身につけた結果と考えられます。そのため、大人になる頃には多動性や衝動性が目立つことは少ないです。
ADHDの子供への対応
ADHDの子供だけではなく、自閉症スペクトラムの子供たちにも効果のある対応方法です。
褒めるべき行動(努力している時も含めて)
①.増やしたい行動をしている・しようとしているとき
②.指示にすぐに従う・従おうとしているとき
③.自発的に行動するとき
④.他の子供と上手に遊んだり譲り合ったりしているとき
⑤.減らしたい行動ではないことをしているとき
褒める時の表情
①.優しい表情で褒める
②.しっかりと相手の顔や目を見て褒める
③.穏やかな口調で褒める
④.タイミングを間違えない(時間が過ぎてから褒めると効果が薄れてしまう)
要注意な褒め方
①.出来て当たり前のことを褒める
②.「やればできるじゃない」という皮肉を込めた褒め方
③.過剰に子供扱いするような褒め方
増やしたい・減らしたい行動の対応方法
「増やしたい行動」
褒める、相手をする
「減らしたい行動」
してみせて、真似させる
※ 相手を無視する行為は控える
「絶対に許せない行動」
その行動がみられたら、すぐに止める