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意識障害とは?
意識は意識レベル(覚醒度)と認識機能の2つの要素で捉える。両方が正常に保たれた状態を「意識清明」といい、どちらか一方または両方とも障害された場合を「意識障害」という。
意識の覚醒度は外的刺激に対する反応による評価することができ、臨床で一般的に用いられる評価方法はJCSである。(JCSの説明→:JCS(Japan Coma Scale)の検査手順・解説)
意識を司る脳の部位はどこ?
意識は大脳皮質と上行性網様体賦活系により維持されている。
上行性網様体賦活系は、脳幹網様体・視床の非特殊核・視床下部までを含めた経路であり、末梢からの感覚刺激などの入力を受けて大脳皮質を覚醒状態にする。
そのため、脳幹・間脳(視床)・大脳皮質のいずれかが障害された場合は意識障害が起こりうることを頭に入れておく。
意識障害の主な原因
意識障害の原因は、大きく分けて2つに大別される。
大脳皮質の一次的障害
くも膜下出血、脳炎、低酸素脳症、全身的疾患(熱性疾患、糖尿病、肝不全、呼吸不全、心不全など)、薬物中毒などにより、大脳皮質にびまん性の障害が生じる。
大脳皮質の二次的機能低下
上行性網様体賦活系の障害による大脳皮質の機能低下。その他に、脳幹や視床を含む脳出血や脳梗塞などが原因となる。
ここで正常な意識状態を一旦確認してみよう
臨床的に意識が正常もしくは清明であると判断するためには、具体的に下記の条件が満たされている場合である。
①.外部からの刺激への適切かつ敏速な反応
②.外界の出来事や対象への十分な注意
③.自分の現在の状況の正しい認識(見当識)
④.新しい出来事や体験の誤りない印象づけ(記銘)
⑤.周囲の出来事や質問の意味の正しい理解(認識)
⑥.全体としての思考のまとまり
意識障害の分類
昏睡(Coma)
自発運動はみられず、筋肉は弛緩し、尿や糞便の失禁が起こる。皮膚をつねったり、針で突いて痛覚を刺激してもまったく反応がない。
しかし、眼窩上縁内側や手指の爪根部、向こう脛の上、胸骨の中央などを指やボールペンの先などで強く圧迫したり、アキレス腱や大胸筋を強く摘むと反応がみられることがある。このような刺激に対し、最初は反応がみられたが、次第に消失した際には昏睡が進行したと考えて良い。腱反射、角膜反射も消失すれば深昏睡(Deep Coma)である。
半昏睡(Semicoma)
ほぼ自発運動はみられない。皮膚を針で強く刺激すると逃避反射がみられたり、動きの小さい反応を示す。腱反射や瞳孔反射はみられるものの、昏睡同様に便失禁を起こす。
昏迷(Stupor)
しばしば自発運動がみられる。触覚刺激や大きな音、明るい光などの刺激に反応し、刺激を避けようとして手足を引っ込める。また追い払おうとすることもある。刺激を続けると簡単な質問や指示に反応を示すこともある。便失禁は必ずしも伴わない。
傾眠(Somnolence)
一般的に自発運動や自発語がみられる。様々な刺激で覚醒し、質問に答えたり、指示通りに動作を行うことも可能。覚醒時の精神状態は正常に近いか、軽く障害されている程度である。たた刺激がなくなると再び眠ってしまう。ときに錯覚・妄想・せん妄などを起こす場合もある。
傾眠と昏迷の間を「昏眠」や「嗜眠」と呼ぶことがある。
軽度の意識障害(意識変容)
正常な意識とは異なり、認知や思考が歪んだ状態である。精神現象の混乱が主な症状で、興奮状態に陥りやすい。
せん妄(Delirium)
脳の機能が急性に障害された場合に出現しやすい。軽度ないし中等度の意識混濁の上に、精神運動興奮・幻覚・妄想などが加わった状態で暴れることもある。
慢性アルコール中毒で手指の振戦とせん妄を呈する症状を「振戦せん妄」といい、急な禁酒などの誘因が加わって発症する。また夜間に起こるせん妄を「夜間せん妄」といい、脳動脈硬化のある高齢者に起こりやすい。
錯覚(Illusion)
刺激の程度や質を誤って知覚することで、例えば目の錯覚で対象物を幽霊と勘違いしてしまうなどがある。
幻覚(Hallucination)
実際には外部からの感覚刺激は無いにも関わらず、対象を知覚してしまう。実際には見えないものを、あたかも目で見える症状を幻視といい、実際には聞こえないものを、あたかも聞こえる症状を幻聴と呼ぶ。
朦朧(もうろう)状態
意識が朦朧としており、全ての判断力が低下している状態。この状態の時は記憶も曖昧になり、後になって思い出せないことが多い。
アメンチア
外界の認識が困難になり、思考がまとまらず、自分自身が困惑している状態。
意識障害から回復する際の注意点
意識障害から回復する際には、すぐに正常な状態に回復するのではなく、臨床的には意識が清明になってからも、暫くは意欲などが低下した状態が続くことがある。これを通過症候群と呼び、通常6週間以内で回復し、その多くは約1~3週間以内に回復する。