ADLを獲得するには?
年齢・性別・体型・運動能力・既往歴・受傷前の精神状態・合併症の有無・リハビリ開始の時期が、ADLの獲得に影響するといわれている。また残存機能を十分に活用して目的動作を獲得するには、適切な福祉用具や住環境の整備が必要になる。
この記事の最後に、年齢が中年期までの場合に獲得可能と思われるADL一覧を記載しているが、その前にレベル別の上肢機能を確認してみよう。
上肢機能は損傷レベルにより大きく異なる
【C4レベル】
肩関節の運動のみ可能。
【C5レベル】
肩関節の運動に加え、肘関節の屈曲運動が可能。
【C6レベル】
肩関節および肘関節の運動に加え、手関節の背屈が可能。テノデーシスアクションを用いた把持動作が日常生活で有用である。
【C7レベル】
C6レベルの機能に加え、手関節の掌屈と、肘関節およびMP関節の伸展が可能。
【C8レベル】
C7レベルの機能に加え、手内筋を部分的に動かせることが可能。
実際にレベル別で可能なADL一覧
レベル | key muscle | 可能なADL |
C4 | 肩甲挙筋 | ・タッチセンサーなどのよるナースコールの使用 ・チン(顎)コントロールによる電動車椅子の操作 ・タッチセンサーや呼気センサーを使用し、環境制御装置によるOA機器やベッド操作 ・マウススティックによるパソコン操作 |
C5A | 三角筋 上腕二頭筋 |
・コの字型ジョイスティックを使用して電動車椅子の操作 ・ポータブルスプリングバランサーを使用してページをめくる ・ポケット付き手関節固定装具を使用してのスプーンまたはフォークで食事 |
C5B | 上腕二頭筋 腕橈骨筋 |
・車椅子駆動用手袋を使用し、室内にて手動車椅子の操作 ・顔を拭く、歯磨き ・パソコン操作 ・車椅子操作用手袋の着脱 ・電話をかける ・リモコンによるOA機器、ベッドの操作 ・長座位の保持 ・車椅子上で除圧ができる ・両手でコップを持って飲む |
C6A | 橈側手根伸筋 | ・柵を使っての寝返り ・ベッド上での前後、左右の移動 ・万能カフを使用してスプーンまたはフォークで食事 ・手掴みでも食べられる ・洗顔、整髪、髭剃り ・かぶりシャツ、ループを使用して靴下または靴の着脱 ・リングを使用してファスナーの上げ下ろし |
C6B | 長短橈側手根伸筋 大胸筋 前鋸筋 |
・プッシュアップができる ・仰臥位からの起き上がり ・側臥位の保持 ・車椅子とベッド間の前方移乗 ・スライディングボードを使用して車椅子と自動車間の移乗 ・ハンドル回旋装置などの改造を施した自動車の運転 ・爪切り台を使用しての爪切り ・改良カテーテルを使用して男性は自己導尿可能 ・埋め込み式便器への移乗 ・長座位で座薬挿入機器を使用して座薬を挿入できる ・ループを使用してズボンの着脱 ・殿部の皮膚点検 ・自走式シャワーチェアによる入浴 ・洗い台への移乗(同じ高さであること) ・ループつきタオルを使用して洗体、洗髪 |
C7 | 上腕三頭筋 指伸筋 橈側手根屈筋 |
・側方移乗 ・手すりを持って洋式便器への移乗 ・便器での座薬挿入 ・浴槽への出入り |
C8 | 手指屈筋 | ・箸の使用 ・床から車椅子への移乗 |