関節の緩み肢位と締まり肢位
まずは、それぞれの簡単な説明を記載しておく。
「緩みの肢位(LPP:loose packed position)」
関節に生じるストレスが最小となる肢位(関節角度)を指す。
関節包や靭帯が緩み、関節面が最も離開している。
「締まりの肢位(CPP:close packed position)」
関節包や靭帯が緊張している肢位であり、関節面が密着して固定されている。
そのため、最も関節が安定している肢位でもある。
それぞれの肢位の特徴
どのような特徴があるのかを表に示す。
緩み肢位 | 締まり肢位 |
関節面の適合性が低い(接触面積が小さい) | 関節面の適合性が高い(接触面積が大きい) |
関節包・靭帯などの軟部組織が弛緩状態 | 関節包・靭帯などの軟部組織が緊張状態 |
外力に対して不安定・動揺する | 外力に対して安定している |
肢位を維持するのに筋力が必要 | 肢位を維持するのに筋力が不要 |
力仕事に不適である | 力仕事に適している |
固定しても痛みが生じにくい | 長時間固定すると痛みが生じる |
どちらの肢位で関節モビライゼーションを行うべきか?
関節包や靭帯などの軟部組織が緊張している場合、外力を加えても動揺しない。
つまり離開法や滑り法などの関節モビライゼーションが行えないということになる。
そのため、基本的に緩みの肢位で関節モビライゼーションを行っていく。
各関節の緩み肢位と締まり肢位
各関節 | 緩み肢位 | 締まり肢位 |
椎間関節 | 屈曲と伸展の中間 | 伸展 |
下顎関節 | 軽度開口位 | 歯を食いしばる |
肩甲上腕関節 | 外転55°、水平内転30° | 外転、外旋 |
肩鎖関節 | 上腕を体側に楽に休めた位置 | 外転90° |
胸鎖関節 | 上腕を体側に楽に休めた位置 | 最大肩関節挙上 |
腕尺関節(肘関節) | 屈曲70°、回外10° | 伸展 |
腕橈関節 | 完全伸展、完全回外 | 肘屈曲90°、前腕回外5° |
近位橈尺関節 | 屈曲70°、回外35° | 回外5° |
遠位橈尺関節 | 回外10° | 回外5° |
橈骨手根関節 | 中間位で少し尺側 | 伸展位で橈側 |
手根中手関節 | 外転と内転の中間、 屈曲と伸展の中間 |
完全屈曲 |
中手指節関節 | 軽度屈曲 | 完全対立 |
指節間関節 | 軽度屈曲 | 完全伸展 |
股関節 | 屈曲30°、外転30°、軽度外旋 | 完全伸展、内旋 |
膝関節 | 屈曲25° | 完全伸展、脛骨外旋 |
距腿関節 | 底屈10°、内反と外反の中間 | 最大背屈 |
距骨下関節 | 各可動域の中間 | 回外 |
横足根関節 | 各可動域の中間 | 回外 |
足根中足関節 | 各可動域の中間 | 回外 |
中足趾節関節 | 中間 | 完全伸展 |
趾節間関節 | 軽度屈曲 | 完全伸展 |